蔵六ブログ
2021.11.09
花押の事 その②
■時代の推移と花押
飛鳥・奈良時代 この時代の自署は楷書体で、筆画の省略が ない。仏教の普及のために謹厳な写経が行 われた。
平安時代前期 三筆(空海・嵯峨天皇・橘逸勢)の時代。自 署は楷書体や行書体で書かれている。当時 の最高の知識人たちが知識や知恵と技量 を競い、王義之(おうぎし)の書風を志した。
平安時代中期・後期 三跡(三蹟)の時代。花押の萌芽期といえる。
初期の花押は草名体(そうみょうたい)と呼ば れる。草書で書かれた自署が発達し、二字 が結合されて一字のように工夫される。
後期には花押の発展期に入る。右図の三跡 の花押は二合体の初期で、偏(へん)と旁(つ くり)からなる。 空 海 最 澄 王義之 三 跡 小野道風 藤原佐理 藤原行成 平清盛 西行法師 源頼朝 源義経 弁 慶 鎌倉時代 鎌倉時代以降、武士による文書発給が格段 に増加したことに伴い、武士の花押の用例も 増加した。自署の形式も、源頼朝が「官位・ 官職・姓・名・花押」と、名の下に花押を書い たことが前例となって、これまでの公家様(く げよう)に対して武家様(ぶけよう)という花押の 形状・署記方法が生まれた。
また、中国から 来日した禅僧らが用いた、直線や丸などを 形象化した禅僧様(ぜんそうよう)なども発生。