蔵六ブログ

2022.01.28

花押その④

 

■花押の種類

江戸中期の故実家、伊藤貞丈(さだたけ)は、自著の『押字考』において、花押を 次の5種類に分類している。後世の研究者もおおむねこの分類を踏襲している。草名体(そうみょうたい、そうなたい) 草書体を崩したもの。 草名体 北条早雲二合体(にごうたい) 二合体 実名二字の部分(偏や旁など)を組み合わせて図案化したもの。一字体(いちじたい) 運 慶 実名のうち一字だけを図案化したもの。 一字体別用体(べつようたい) 伊達政宗 明朝体 文字ではなく、絵などを図案化したもの。 毛利元就明朝体(みんちょうたい) 別様体 上下に平行した横線二本を書き、中間に図案を入れたような形体のもの。 ここでいう「明朝体」とは、文字書体(フォント)ではなく、明王朝の様式という意。 徳川吉宗 【註】 北条早雲=「九朗」の草書体を崩したもの/運慶=「運」のしんにゅうと「慶」の旁を組み合わせたもの/毛利元就=「就」1 字を図案化/ 伊達政宗=セキレイを図案化 五種類の分類の他に「公家様・武家様」と「禅僧様」とに分類する方法もある。 公家様公家様(くげよう) 後鳥羽上皇 平清盛 貴族の花押の様式。 花押は実名(姓名)を自署する代わりのものであるため、 実名の文字を花押化している。武家様(ぶけよう) 豊臣秀吉 武家様 鎌倉時代以降、武士特有の形状と署名方法によるもの。 武田信玄 実名とは無関係ない文字を花押化したり、 実名と花押を併記したりする特徴がある。禅僧様(ぜんそうよう) 一山一寧 鎌倉期に中国から来日した禅僧が用いた様式。 直線や丸などで形象化され、 沢庵宗彭(沢庵禅師) 字というよりも符号に近いものが多い。 禅僧様 【註】 一山一寧=「一・口」は諡号(しごう)の「一山国師」を表す。国を口で略記/沢庵宗彭(たくあんそうほう)=「宗彭」の下の図案は法具の「払子(ほっす)」。タクアン漬けを考案した

 

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